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セキュリティトークンを扱う国内初のPTS「大阪デジタルエクスチェンジ」とは

セキュリティトークンを扱う国内初のPTS「大阪デジタルエクスチェンジ」とは

Fumiya
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Entry - 初級2022年1月18日 00時00分

2021年4月、SBIグループと三井住友フィナンシャルグループはPTSの運営会社「大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(ODX)」を共同で設立しました。セキュリティトークンを扱う国内初の取引所として話題になりましたが、具体的にはどのような取引所を、どのような計画で立てられるのか、解説していきたいと思います。

大阪デジタルエクスチェンジの概要

大阪デジタルエクスチェンジは、証券市場の活性化を目的とした新規の株式PTSと、国内初となるセキュリティトークンの取引の場を運営することを目指して立ち上げられました。同年10月には野村ホールディングスおよび大和証券グループ本社が資本参加し、

SBI PTSホールディングス株式会社(SBIの100%子会社) ... 70%株式会社三井住友フィナンシャルグループ ... 20%野村ホールディングス株式会社 ... 5%株式会社大和証券グループ本社 ... 5%

以上のような資本構成となっています。2022年春の開業を予定しており、まずは株式PTSの運営、2023年以降に債券や証券、不動産などの資産を裏付けとするセキュリティトークンの取引市場の開設・運営を目指しています。

PTS とは

これまで、東京証券取引所をはじめとする各証券取引所は、株取引において顧客投資家から売買注文を受け付けた場合は、証券自己(自己売買部門)や第三者と取引させるのではなく、必ず証券取引所に注文を流して取引を集中させなければならないという「取引所集中原則」を規則に盛り込んできました。これは、

  • 売買注文を取引所市場に集中させることで、注文者が適切な相手方を見つけることを容易にし、円滑な流通が確保されるから
  • 多数の者の大量注文の間の自由な競争売買によって適正で公正な相場が形成される
  • という理由からです。しかし、ITの発達により、価格や数量など取引に関する情報さえ公表されていれば、証券取引所という物理的な場所に取引を集中させなくても「円滑な流通」と「公正な相場」を確保することができるようになりました。むしろ、取引所集中義務が課せられていることによって、

  • 取引所の気配よりも顧客にとって有利な価格で売買を執行することができる状況でも、必ず注文所に注文を回送しなければならない
  • 自分の出した注文によって市場価格を変動させてしまうマーケット・インパクトを避けるために市場街で注文を執行したいとう大口投資家のニーズに応えることができない
  • など、デメリットが目立つようになりました。そこで、1996年に橋本内閣が提唱した「日本版ビッグバン」と呼ばれる金融制度改革の一環で、この取引所集中義務が1998年12月に撤廃されることになったのです。こうして解禁された取引所外での取引のうち、PTS (Proprietary Trading System) は、各証券会社が独自に開設している私設取引システムを指します。証券取引所では、取引所が空いている時間帯でしか取引ができず、15時になるとその日の取引は終了しますが、PTS ではほぼ一日中空いているところがほとんどで、夜間も取引ができることが特徴です。

    セキュリティトークンのセカンダリー・マーケットを作る

    2020年の金商法改正において、暗号資産(仮想通貨)に関する規制強化と共に、「電子記録移転権利」および「電子記録移転有価証券表示権利等」が規定され、セキュリティトークンの金商法上の位置付けが明確化されました。その結果、野村総合研究所、大和証券、三井住友信託銀行を始めとする大手金融機関など、日本国内でも発行事例が多く見られるようになりました。これまでの証券と異なり、トークンにすることで流動性の向上が期待されますが、肝心な流通の仕組みはまだ整っておらず、日本には現状セキュリティトークンの取引所は存在しません。大阪デジタルエクスチェンジは、日本初のセキュリティトークンの取引所としてセカンダリー・マーケットを整備することで、適正な価格形成や流動性の向上、そして、発行市場(プライマリー・マーケット)の活性化を促すことを目指しています。また、これまで機関投資家が中心だった商業不動産などの金融取引に一般の個人投資家も広く参加できるようになることが期待されます。

    総論

    今回は、セキュリティトークンを扱う国内の取引所として、「大阪デジタルエクスチェンジ」をご紹介しました。大阪デジタルエクスチェンジ以外にも、日本STO協会が「セキュリティトークン市場活性化委員会」を設置するなど、市場整備の検討が進んでいます。また、債権譲渡等における第三者対抗要件について、産業競争力強化法の改正により特例措置を講ずる旨が2021年2月4日に法務省より公表されており、法規制のアップデートも期待されます。これらの動きから、今後、セキュリティトークンによる金融資産の証券化・流通はより一層注目が集まることでしょう。

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