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NFT って部分所有できるの? F-NFT について不動産を例に解説

NFT って部分所有できるの? F-NFT について不動産を例に解説

George
George
Intermediate - 中級2021年12月31日 00時00分

F-NFT とは

みなさんは F-NFT というワードを聞いたことがありますでしょうか。これは Fractionalized-NFT もしくは Fractional-NFT のことで、特定の割合に分割された NFT のことを指します。Fraction とは日本語で分数のことを指し、F-NFT は NFT の分割販売と言えるでしょう。例えば、100万円する NFT でも 100分割すれば一つ当たり 1万円なので買いやすくなりますよね。

今回は不動産ブロックチェーンの Propy を例に NFT を分割して販売する Fractionalized-NFT に焦点をあててお話ししたいと思います。

不動産の NFT 化の3つの方法

そもそも不動産の NFT 化は、以下 3 つの方法により実現可能です。それぞれ見ていきましょう

物件全体の NFT 化

こちらは物件そのものが NFT として取引されるパターンです。この場合は不動産の所有権や信託受益権、不動産利用権がトークン化され、誰か 1 人がその権利を持つことになります。2021 年時点でアートやゲームの分野で一般的に普及しているタイプの NFT化の方法です。

不動産業界においてそれらの権利は、登記や信頼されている機関の証明および契約において担保されていました。しかしブロックチェーンの登場によりこれらの権利を公なトランザクションとして表すことができるようになりました。そのため、不動産に関する権利の移転は比較的容易になったと言えます。多くの不動産ブロックチェーンプロジェクトはこの点に着目し、不動産流通の既存プロセスをカプセル化して、本当に必要な権利だけをシームレスに取引をするための手段としてブロックチェーンの活用に期待を寄せています。

しかし、いくらブロックチェーン上での取引が改竄されないとしても、ブロックチェーン自体の信頼性、該当スマートコントラクトを作った企業の信頼性、法的や契約の裏付けがなければブロックチェーンは真の効力を発揮することができないと言えるでしょう。そのため Propy は米タイトル保険の裏付けをし、RealT は米デラウェア州の Series LCC で法的な不動産所有を証明することにより対処しています。

このように NFT化をして販売するにも、市場で受け入れられるためには法的な裏付けのテクニックやプラットフォームの信頼性の証明が必要だと言えるでしょう。

物件の分割取引のために NFT をシャーディングする

こちらは、F-NFT として物件全体を細切れにして取引をします。F-NFT は何をどう分割するのかによって意味合いが変わりますので注意が必要です。もし読者の方がエンジニアでデータベースの分割について知っている方はイメージが湧きやすいかもしれません。

シャーディングは NFT を同様の価値を持ついくつかのトークンに分割することを指します。たとえば不動産証券の信託受益権を分割して、トークン所有者が全員等しく年利 5% を得られるようにする場合はこのシャーディングが当てはまります。Fractionalize とは直訳すると分数化であり、NFTを 同一の価値を持つ部分に分割することですので、一般的には F-NFT というと、NFT をシャード (水平分割) することを指すケースが多いです。

このようにシャーディングが概念的な分割を示すのに対して、例えば庭・一階部分・二階部分と物理的に分割する方法も概念としては考えられますよね。データベースで言うとパーティショニングのような考え方です。しかし、このケースは少なくとも現在の不動産ブロックチェーンのプロジェクトでは見当たりません。この分割方法は物件の流動性を著しく損なうことになる可能性があり、また分割部分の価値評価も難しいため採用されていないように思われます。 そもそも現在多くのプロジェクトで採用されている F-NFT化のテクニックは、ERC-721 の代替不可能なトークンを ERC-20 の代替可能なトークンに変換して流通させるというものです。この方法では分割されたトークンが代替可能になってしまいますのでパーティションを切ることが許されません。

F-NFT で物件をシャーディングする方法に関しては米国が一番進んでおり、Propy、Landshare、RealT などの企業が多く出てきています。日本はパブリックチェーンベースのサービスではなく、プライベートチェーンのサービスとしてこの分野が進んでいます。SBI が扱っているこちらの STO 事例もプライベートチェーンです。『物流不動産を裏付資産とするセキュリティトークンの公募ファンドの実施及びSTOビジネス領域における業種横断の協業について

今後、これらの事例に関しても扱っていきたいと思います。

物件の一部を F-NFT化する

こちらは F-NFT の応用と言えます。この方法では物件の一部、例えば 20% を流通させることになります。この方法は非常に面白く、実現された場合に不動産の取引と所有のありかた を決定的に変える可能性があります。現在みえている一つの活用方法がリースバックとの組み合わせによる分割所有モデルです。

リースバックとは、自宅を売却し、買主と賃貸借契約を締結して、今まで通り自宅に住み続ける方法を指します。主に住宅ローン返済が厳しくなった時の最後の一手などと言われることもあり、生活を崩さずに負債を解消する一つのテクニックでもあります。また再売買予約権をつけて契約することで、金銭的な余裕が生まれたときに家を買い戻す選択肢があることも魅力の一つです。リースバックというと、どちらかというとネガティブな背景があり利用されるケースが多いですが、ブロックチェーンではこれをポジティブな方法で利用可能になります。

例えば、4,000万円の物件を買いたいが、手元には 2,000万円しかない場合、2,000万円を使って物件の 50% を取得し、残りの 50% を複数の投資家に F-NFT として販売したとします。すると物件の半分を所有しているが、「半分は賃貸に住んでマージンを含めた利益を投資家に還元している」という状態を作り上げることができます。最終的に残りのトークンを居住者が買い集めることができるコントラクトの設計をすることで、まさにブロックチェーン上のリースバックを実現できることになります。今まで幾度となく「売買か、賃貸か」の論争が繰り返されてきましたが、F-NFT を使うことでその中間の選択肢が生まれたことになります。

しかし、この方法も現段階ではまだ完璧とは言えません。この実現を考える際に「誰が残りの半分をトークンとして所有したいと思うのか」という問いに答える必要があります。投資用不動産と居住用不動産の大きな違いとして、利回りがどれだけ意識されているのか、という点があります。必然的に投資用の不動産 NFT として投資家にトークンを所有してもらうためには、高い利回りと流動性を提供する必要があります。そのため、この方法を適用させることができる不動産のタイプは、都心で流動性が高い・値下がりしづらい・画一的なつくり・一般的な間取り (1R, 1K, 1LDK, 2LDK) である・マンションなどの条件をクリアしなければなりません。

また、どのようにしてリスク管理をしてお金を市場から集めるのか (=借りるのか) という点も重要です。ブロックチェーン上でのレンディングの仕組みも整備する必要がありますし、そもそもお金を借りるための担保となる "なにか" が必要になってきます。米不動産ブロックチェーンの企業である Propy は、米タイトル保険のファンドで裏付けされた不動産NFT を、レンディングの際の担保として活用することを目指しています。

しかし低金利の日本においては、初期費用を大量に用意して市場からリスクの高い複雑な方法で資金を調達するよりは、名の知れている銀行から条件の良いフルローンの融資を受けた方が簡単で安心ですよね。また、いかに不動産によって裏付けられたトークンであっても、 NFT を買うためのお金を銀行は貸してくれないので、初期費用の捻出も非常に難易度が高くなります。

このようにリースバックの仕組みを不動産ブロックチェーンに組み入れるにはまだ高い障壁がありそうです。しかしこの方法が確立されると、市場がもう少し成熟してきた場合、不動産取引の在り方が変わるきっかけになるので、F-NFT の分割所有の将来には期待したいと思います。

なぜ投資家が NFT を購入するのか。米国と日本の違い

例えば、米不動産ブロックチェーンの企業である Propy における NFT 取引は税法上のパス・スルー・エンティティである "1031 Tax Deferred Exchange" に対応しています。この制度は、不動産の所有者が物件を売却し、その売却益を「同種の」不動産に投資すると、キャピタルゲイン税を繰り延べすることができるというものです。この制度は非常に強力で、米国の富豪はこのテクニックを使って不動産によって資産を増やし税対策をしています。つまり、米国においては不動産トークンの取引が "不動産の取引" として認められる抜け道があるということです。

仮想通貨の世界では 2021 年の時点で、2倍や3倍の価値に膨らむトークンがゴロゴロしています。そんな中で決してハネない不動産の暗号通貨取引を推進するには、利回り以上のメリットが必要となるでしょう。この IRS規定は米国内でしか適用されませんが、投資家として仮想通貨の取引にバリエーションが増え、資産を守ることにつながるという点はとてもポジティブなことです。

一方で日本の状況はどうでしょう。日本におけるセキュリティトークン(ST: Security Token)という用語が指す内容は、電子的な「トークン」(証票)に、既存の法律(金融商品取引法等)の枠組み内の何らかの証券等の権利を表示したものです。現在では「電子記録移転有価証券表示権利等」が主に該当します。(引用 - 日本総研)

日本においては慣習が異なり、パブリックチェーン上のセキュリティトークンの保有だけでは不動産の取引があったことを認められることはありませんし、米タイトル保険のような仕組みもありません。米国のトークンを日本で買ったとしても、他の仮想通貨と同様で取引された時点で利益が確定して税金の対象となります。

一方で日本においてもセキュリティトークンが税法上、特定受益証券発行信託として扱われている例もあります。三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社が神戸六甲アイランドDCを証券化したトークンがその一例ですが、こちらはプライベートチェーン上のトークンであり、性質は J-REIT に似ており、J-REIT のポートフォリオから一物件を抜き出して取引可能にしたような扱いになっています。

国際的なトークン取引の実現には、まだまだ不動産取引及び税制の抽象化をさらに進める必要がありそうです。

総論

F-NFT の分野ですが、そもそも NFT が一番進んでいるアートの分野においてもまだ未成熟な段階です。「物件の分割取引のために NFT をシャーディングする」のパートで書いたように、F-NFT は代替可能なトークンです。NFTマーケットの大手である OpenSea で取り扱われるトークンもピュアな NFT(非代替性トークン)であり、代替可能な F-NFT (分割された NFT) がリスティングされることはありません。このように現在においては F-NFT の市場も限定的です。

米不動産ブロックチェーンの RealT は物件ごとに ERC-20 のトークンを発行していますが、流動性は非常に低く、売りたいと思ったらいつでも売れるレベルにはなっていません。筆者も Uniswap で彼らのトークンの購入を試みましたが、流動性がなく買うことができませんでした。

今後 F-NFT が盛り上がるために必要なのはセカンダリマーケット (中古市場) の発展であることは自明ですが、さらに不動産の文脈を加えると、国ごとの税制や、インセンティブモデルの洗練、そして DeFi としてのプラットフォームの成熟が必要になってきます。

米国においては Propy や RealT のような不動産企業がパブリックチェーンを使って市場を盛り上げたあとに、金融機関がプライベートチェーンで STO (Security Token Offering) を推進している流れがあります。一方で日本においては前者が不在のまま金融商品としての 不動産STO が推進されています。各国の制度の違いはありますが、こうした業界の背景やプレイヤーの動向、アプローチによっても市場発展の将来が変わってくることには留意する必要があるでしょう。

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