不動産ブロックチェーンの情報ハブ
不動産ブロックチェーン企業のエンジニア採用を探る!

不動産ブロックチェーン企業のエンジニア採用を探る!

yuhattor
yuhattor
Intermediate - 中級2021年12月21日 00時00分

これまでの投稿では、不動産ブロックチェーンのプロジェクトを多く扱ってきました。一部の読者の方は「不動産のブロックチェーン上での取引を実装したい」と思われているかもしれません。この記事はそんなプロフェッショナルの皆様のための記事です。何回かに分けて「不動産取引をスマートコントラクトで実装するとは如何いうことか」について取り扱っていきます。

第一回目はそもそも誰が実装するのか、という点です。

誰が実装するのか

さて、この記事を読んでいる方はブロックチェーンのスペシャリスト、不動産の専門家、もしかするとエンジニアでしょうか。不動産取引をブロックチェーン上で実装する場合どのようなスキルセットを持つ必要があるかについて、自ら立ち上げる場合でも、プロジェクトにジョインする場合でも、雇う立場としても知っていて損はないでしょう。

不動産取引をブロックチェーンで実現しようとする組織は 2タイプあります。ひとつ目が従来型の中央集権による組織で企業の形をしているもの、そして2つ目が分散型の DAO です。それぞれどのような募集があるのか見てみましょう。

中央集権型

RealT

RealT の Smart Contract Engineer の募集はこちらから見ることができます。2021 年末の段階で 1000万円〜1400万円で募集をかけていました。特異な点としては下記のような項目が挙げられます。

責任

● RealT社の次の製品開発を可能にするスマートコントラクトのシステム設計に協力し、アドバイスを提供する。● 不動産資産を保有し管理するためにイーサリアムウォレットを使用する経験のギャップを軽減し、排除する。● 様々なDeFiプロジェクトや企業とコミュニケーションをとり、他のイーサリアムアプリケーション内でのRealTokensの統合を促進する。

必須要件

● Solidity エンジニアリング● ユーザー資金管理のベストプラクティス、様々な侵入や攻撃に対する理解と制御● Ethereum ウォレットやアセットマネジメントシステムの最新知識

この点で興味深い点 2つを挙げるとすると、1つ目がこの求人ではエンジニアとして DeFi プロジェクトとの連携をとっていき、統合を推進する必要があることです。筆者の感覚ではこれらの渉外活動は、開発が中心のエンジニアの範疇を超えてくるように聞こえます。Product Manager まではいかないまでも、ある程度のフルスタックな実力が求められるようです。2つ目が必須要件として、セキュリティに関する知識と技術が必要であるということです。一般的にスマートコントラクトは一度デプロイすると修正することができません。しかもスマートコントラクトの成果物は世界中に公開されています。

Propy

Propy も積極的に採用活動をしています。Full Stack Developer および Mid to Senior Back End Developer の募集ページが見つかりました。主な責任に関しては、どちらも同じでした。

主な責任

● 本番用バックエンドコードの開発 - .NET Core● ElasticSearch、Kibana、MongoDB、DevOps ツール● 読みやすく保守性の高いコードを書き、適切なドキュメントを作成する。● 指定された任務に必要な開発言語やツールの専門的な技術を日常的に使用する。● 要件の明確化、計画、設計において積極的な役割を果たす。

興味深い点は Blockchain という文字が採用文のどこにも出てこないことです。もっともこちらは Blockchain Engineer の採用ではありませんので当然と言ったら当然かもしれません。ただし、事実として彼らは下記のように「我々は不動産業界のパイオニアである」と採用ページにも書いてありますので、あくまでもブロックチェーンは手段であるという姿勢が読み取れます。

Propy は、不動産取引プロセス全体を迅速、簡単、かつ安全にすることを目的とした、不動産分野のパイオニアです。私たちのソリューションは、すべての参加者に、最先端の技術と現代的な原則を使用して完全にオンラインで取引を完了することができる単一のプラットフォームを提供します。

彼らのメッセージングは非常に巧妙で、TechCrunch などのニュースサイトや投資家向けの資料には Blockchain、NFT というようなバズワードを散りばめ、一方でブロックチェーンに馴染みのない人や採用に関してはブロックチェーンとしてのメッセージを出していないように見えます。また Propy が実施しようとしていることが不動産取引プロセスの改善であり、取り扱う範囲が非常に広いため、一般的なアプリケーションのためのエンジニアが欲しいということなのでしょう。また、上述した RealT のような採用基準を満たす人を採用するハードルが高いからというのもあるかもしれません。

これらの情報はサンプルとして 2021年末に探した情報ですので、たまたま求人情報を出していた/出していなかったという可能性にも大いに留意したいところです。またこの手の採用はリファラルに絞ったり、LinkedIn や GitHub 情報経由での直接オファーも考えられるため表に出にくい情報でもあります。そして、多くのブロックチェーンビジネスにとってブロックチェーンのコードを書いていく仕事は一部にしかすぎません。これは多くの企業が常にデータベース管理者の求人を出していないのと似ています。

各社のアプローチは違いますが、上記からわかるのは、あくまでもブロックチェーン技術をどの位置付けにポジショニングするのか、採用時にどのようなメッセージを出すのか、そしてエンジニアがプラットフォームの方向性決定やインテグレーションに関して、どこまでその領域に踏み込むのかは大きな差が出ているということです。

分散型

分散型の組織では採用もだいぶ異なります。REtokenCitaDAO など、DAO のスタイルの組織を選んで始めた場合、従来型の組織ではありません。まず給料がフィアット通貨で支払われないので、多くの場合参加者のエンジニアは独自トークンをもらうことになります。また、それと同時にエンジニアを雇う場合はフルタイムではなく多くの場合副業エンジニアを雇うことになります。

一方で不動産業界でブロックチェーンを始めた場合、不動産関連の法的な手続きなどのために、Web 2.0 型の組織も同時に持つケースがほとんどですので、多くの場合で完全な分散型組織は実現できておらず、中央集権と分散型のハイブリッドになっています。創業の CTO と複数の技術メンバーがフルタイムで開発をまわし、その他のサポートをコミュニティから得るスタイルです。これは非常に理に適っていますし、開発スタイルは完全にオープンソースコミュニティと一緒です。

ただ現段階で大きな問題点があります。それは DAO なのに自律的に進んでいる組織がないということです。特に不動産のような "実際に存在するもの" をブロックチェーンにのせるプロジェクトの場合は、前述した通り現実世界における法人が必要となるケースがほとんどです。その場合、中央で指揮を取るリーダーが存在することになり、彼らがプラットフォーム上のインセンティブ設計をし、コントリビューターに対してトークンインセンティブを用いてプロジェクトに貢献してもらう流れになっています。

本来の DAO のあり方を考えると、Satoshi Nakamoto のアイデアに惚れ込んだアーリーアダプターが開発を進め、マイニング結果のようなインセンティブも自動的にプログラムが払い出す流れが理想的には感じられますが、現状だとまだその落とし所がついていないように思います。

一般的にオープンソースベースの開発の場合だと、開発者の興味やパッション、キャリア、そして名声、そしてロングタームでは金銭的なインセンティブが動機となり開発者が自発的にプロジェクトに参加します。

一方でブロックチェーン開発においては、現在の暗号通貨の投機的なマーケットにおけるゴールドラッシュ再来という強力なインセンティブが存在します。今後どのようにこれらのプロジェクトが、本来の意味での DAO 組織として "自律的な" インセンティブモデルを確立するのかが楽しみです。また不動産以外の分野でも DAO のあり方は多くのプロジェクトが課題と認識している分野でもありますので、他業界の事例でどのようなものが出てくるのかに関しても注視したいと思います。

Read Next