不動産をNFT にして売却...?その方法を解説!
リアルアセットのデジタル化
ここ数年で暗号通貨が爆発的に流行し、デジタルアセットだけでなく、リアルなアセットを暗号通貨を使って購入できるようになる事例が増えてきました。不動産もその1つで、例えば、マンハッタンの不動産会社マグナム・リアル・エステート・グループが、グラマシーパークに新たに建設される合計約840平方メートルの3つのコンドミニアムを合計2900万ドル(約33億円)で売りに出し、支払いをビットコインのみとしたり、パリ出身DJのDavid Guettaがマイアミにある高級コンドミニアムを1400万ドルで売りに出し、現金もしくはBTC, ETHでの支払いを受け付けたことが話題となりました。
そして、決済手段としてだけではなく、近年盛り上がりを見せている NFT (non-fungible tokens) を使って住宅を売買する事例も模索されています。NFT は、デジタルアートや音楽など、デジタル資産の売買に最もよく利用されていますが、物品の所有権や所有権契約が NFT と何らかの形で結びついていれば、物品の所有権の取引にも利用できます。
TechCrunch 創業者が NFT の家を売りに出す!
TechCrunch 創業者の Michael Arrington氏は、2017年9月に212.5 ETH で購入したウクライナのキエフのアパートを NFT として Propy 経由で売りに出しました。Propyは、シリコンバレーに本拠を置き、ブロックチェーン不動産取引プラットフォームを運営する会社です。2020年11月16日には日本のマーキュリアインベストメント(東証: 7190)から資金調達したことを発表しており、累計調達金額は1,670万ドル以上と注目されているスタートアップです。
Propy の取り組みについては こちらの記事 で詳しく解説しています。このアパートNFTはオークション形式で2万ドルから出品され、9.3万ドル越で落札されました。また、ポルトガルの高級不動産デベロッパーのプロメテウス社は、マデイラ島にある2つの高級物件を、総額410万ユーロ(470万ドル)のカルダノADAで売却し、所有権は NFT として提供しています。トークンの移転だけで所有権も移動できるの?登記はどうするの?といった疑問を持つ方が多いのではないでしょうか?
Propy のキエフのアパートメントの例では、売主であるMichael Arrington氏は、弁護士が作成した将来の買い手に所有権を譲渡するための法的書類に署名をし、NFT にはこの譲渡書類へのアクセス権が紐づけられています。不動産は米国を拠点とする事業体が所有しており、オークションが完了すると NFT の新しい所有者は事業体の所有者となり、不動産自体の所有者となります。NFT が再販される度にこのプロセスが行われます。プロメテウス社の例では、NFTの所有者や譲渡者が各国の法律に基づいて不動産の権利証を合法化できるよう、すべての法的プロセスを管理するとしています。
つまり、今のところ所有権の移転についてはオンチェーンの取引だけでは完結できないため、どの国の事例においても既存の法的な手続きは NFT の譲渡とは別に行わなければなりません。また、キエフの例のように不動産をLLCのような法人格で包むと、利便性と引き換えに税金や譲渡所得が大きくなる可能性があります。
今後の不動産業界におけるチャレンジ
投資用不動産についてはより問題はシンプルとなり、所有権がなくても不動産を裏付けとした収益が手に入るのであれば実質的な便益を得ることができます。具体的には、匿名組合持分、信託受益権を表章するトークンを発行するといった方法があります。ただし、セキュリティトークンは多くの国で有価証券として見なされ、転売や購入数に制限が課せられたり、日本だと有価証券報告が必要になるので、その点は各国の法律に従って様々なスキームが試行錯誤されているところです。
一般的に不動産業界は良くも悪くも規制が厳しく、変化が遅い業界なので、ブロックチェーンに最適化された法整備までには時間がかかるとは思いますが、そもそも不動産は元々が Non-Fungible (非代替的)な資産なので、性質としては馴染みやすいのではないでしょうか。
Propwave では、今後も各国の事例を踏まえながら不動産×NFTの可能性について探っていきたいと思います。