レイヤー2とサイドチェーンの違いとは?
レイヤー2(セカンドレイヤー)とサイドチェーンは、どちらも現在ブロックチェーン(レイヤー1)が抱えているスケーラビリティ問題を解決するためのシステムのことです。ブロックチェーンに関する話題ではよく耳に触れるこれらの言葉ですが、これらの違いはなんでしょうか?レイヤー2およびサイドチェーンソリューションについての理解を深める上で、両者の概要や仕組みについて解説していきます。
ブロックチェーンにおけるスケーラビリティ問題
スケーラビリティとは、「トランザクションの処理量の拡張性」のことで、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかを指します。ブロックチェーンは、その仕組み上、従来のデータベースと比べてスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。
ブロックチェーンでは、ビットコインやイーサリアムといった各ネットワークごとに予め定められた「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、一定量のまとまったトランザクションを「ブロック」として保存しています。したがって、ある単位時間にどの程度の量のトランザクションをブロック化できるかは、コンセンサスアルゴリズムによって決まります。
例えば、ビットコインでは「PoW(Proof of Work)」というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。これは、ある複雑な計算を成功させた人が、そのデータを「承認」してブロックチェーンにトランザクションを記録する役割を担う仕組みです。そして、ビットコインネットワークではブロックチェーンを構成する各ブロックが最大1MBと決められています。
ネットワーク参加者が増えれば増えるほど、オンタイムで同時処理しなければならないトランザクションの量が増えてしまいますが、1ブロックに入れることのできる取引の量には限りがあります。計算が追いつかないことによって、送金に時間がかかる、取引手数料が高騰するといった問題が発生します。ビットコインの取引処理件数は1秒あたり7件ですが、クレジットカードの決済は1秒で数万件をといったスピードで処理が行われています。
このように、ブロックチェーンは、オープンな分散型データベースとして期待を集める一方で、ネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティが担保できなくなるという課題を抱えています。これを解決するために生まれたのが「レイヤー2」と「サイドチェーン」です。
レイヤー2とは
レイヤー2とは、ブロックチェーン外部(オフチェーン)で取引の実行・処理をして、その結果をブロックチェーン(ビットコインやイーサリアムなど)に記録することで、ブロックチェーンの処理負荷を減らす仕組みです。ユーザーにとって、送金手数料が安くなる、取引承認までの時間が大幅に削減されるといったメリットがあります。ブロックチェーンを1層目(レイヤー1)として、その上の層で処理が行われるという抽象概念から、レイヤー2(セカンドレイヤー)と呼ばれています。
既に実用化が進められているレイヤー2としては、ビットコインの決済チャネルとして機能する「Lightning network」、イーサリアムの「Arbitrum」や「Optimistic」、Nearの「Aurora」などがあります。
サイドチェーンとは
サイドチェーンとは、親となるメインチェーンとは異なるブロックチェーンを使ってトランザクションを処理することで、メインチェーンの処理負荷を減らす仕組みです。チャイルドチェーンとも呼ばれます。
メインチェーンとサイドチェーンは、「双方向ペグ(two-way pegging)」と呼ばれる仕組みを介して通信します。双方向ペグを利用すると、両者のアセットを事前に決定した頻度で交換できます。例えば、ビットコインを例にとると、サイドチェーンを使用する場合、メインチェーンのユーザーは、最初にアセットを特定のアドレスに送信してロックする必要があります。ロックしている間、ユーザーはそのアセットを他の場所で使用できず、等価のアセットがサイドチェーンで解放され、使用することができます。逆にそのサイドチェーンのアセットがロックされことで、メインチェーンの元のアセットを解放できます。
最初に構想されたサイドチェーンのホワイトペーパーは、2014年10月12日に Blockstream 社が発表した「Enabling Blockchain Innovations with Pegged Sidechains」です。このサイドチェーンの構想は、仮想通貨取引における流動性改善を目的としたネットワーク「Liquid」で初めて実装されました。
Liquid の他に代表例として挙げられるのは、ビットコインに対する「RSK」、イーサリアムに対する「xDAI」や「SKALE」などがあります。
レイヤー2とサイドチェーンの違い
レイヤー2とサイドチェーンはどちらもスケーラビリティ問題を解決するための仕組みという点では同じですが、最も大きな違いはオフチェーンかオンチェーンかということです。
レイヤー2はオフチェーンでの取引をメインとなるブロックチェーンに格納するため、メインチェーンから安全性の保証を引き継ぎます。そのため、レイヤー1が信頼できるものであればレイヤー2もトラストレスであることが理想としては挙げられていますが、まだそれを完全に実現できているレイヤー2は存在しません。また、途中の取引をオフチェーンで行うために、その途中の取引記録を確認することができず、取引の透明性の問題があります。
一方で、サイドチェーンはメインチェーンとは取引承認者が異なるため、メインチェーンのセキュリティとは独立しています。つまり、ユーザーにとってはサイドチェーンオペレーターを信頼する必要がありますが、2022年4月に、人気NFTゲーム「アクシー・インフィニティ」の専用レイヤー2ソリューション「Ronin Network」から、6億2400万ドルが盗まれたと発表されたという事例もあり、課題が残ります。
総論
レイヤー2とサイドチェーンは、ブロックチェーンが抱えるスケーリング問題を解決する手段として、今後も重要な技術となります。各ブロックチェーンの理解を深める上では、レイヤー2、サイドチェーンも含めたエコシステムの進展を見ていく必要があるでしょう。