世界最大級の暗号資産&不動産イベント ”Crypto & Real Estate Summit” レポート!
2022年3月10日から2日間にかけて米マイアミビーチで世界最大級の暗号資産と不動産のカンファレンスがありました。このイベントは米不動産ブロックチェーンの老舗である Propy が主催のイベントで、さまざまな不動産ブロックチェーンに関する方がパネルとして登壇しています。本記事では、少しでもこの手の海外のイベントの様子がわかるように、どのような人がどのようなお話をしたのかをレポートします。
* 筆者はこのイベントに参加できたわけではありません。そのため Twitter のコメントやその他のレポート内容をサマリーしてお届けします。
イベントの概要
イベントの触れ込みは以下のように、暗号資産の中でも多くのテーマを紐づけた内容となっているようです。
不動産の力とCrypto, Blockchain, NFTsの力を現実世界とメタバースで融合させた初めてのカンファレンスに参加しませんか? 知識を増やし、これらの新しい技術をあなたのために活用する方法を学びましょう - Join us for the first-ever conference that merges the power of real estate with the power of Crypto, Blockchain, and NFTs in the real world and the metaverse.
イベントの主な対象者は以下になっています。不動産と暗号資産関連の投資家や事業者、技術者などが対象です。ただ内容を見る限り、どちらかというと Crypto Native な方々や Web3 界隈の人に向けたプロフェッショナル向けのイベントというよりは、初学者にも分かりやすい内容になっていたようでした。
イベントの登壇者たち
このイベントでは30人以上がスピーカーとして話、400人以上が参加し、盛況に終わったようです。
これからいくつか、アイコニックなセッションと登壇者を紹介したいと思います。
2022 Trends, investing in Crypto Projects vs. Crypto Funds
今回のカンファレンスの目玉セッションの一つです。「2022年のトレンド、CryptoプロジェクトとCryptoファンドへの投資」について、TechCrunch の創設者であるMichael Arrington 氏と、総額30億ドルの不動産取引の買収、ストラクチャリング、交渉の経験を有している Robert Wennett氏が対談しました。
Miami - moving from real estate economy to crypto one
こちらも今回のカンファレンスの目玉セッションの一つです。「マイアミ - 不動産経済から暗号経済への移行」のトークでは Propy CEO の Natalia Karayaneva氏とマイアミ市長の Francis Suarez氏、マイアミをグローバルな技術ハブに変革する eMerge Americas のMelissa Medina 氏がお話ししました。
クリプトフレンドリーな法律を含む新しいビジネスの環境を積極的に整えているマイアミは今後Cryptoと技術のハブへと変化しようとしています。マイアミ市長からは「次の時代のビジネスは、テクノロジーをいかに活用するかで定義されるでしょう。不動産業界も同様です。」「マイアミの経済を多様化させることは、持続可能な財政の未来への鍵であります」とコメントがありました。
How to Stay Culturally Relevant in 2022
こちらも著名スピーカーによるセッションです。「2022年に文化的な関連性を保つには」 こちらは Tom Ferry 氏による、暗号資産に絡めたモチベーションスピーチです。彼は米国における不動産の No1 コーチで、著名な YouTuber です。2022/03/27の段階で 50万人弱のYouTubeのサブスクリプション登録者がいます。Propy CEO の Natalia と対談した YouTube もありますのでぜひご覧ください。
彼はもともと暗号資産の世界の住人ではないですが、他のイベントでも暗号資産をテーマにしたディスカッションを行うなど、少しずつこの分野の露出を増やしています。スピーチでは彼の人生を変えた5つの質問があったようです。
Why are you on this planet? - あなたはなぜこの地球にいるのか What are your God given talents? - 神様から与えられた才能は何か What do you value? - 何を大切にしているか What are you building? - 何を作っているか Who would you be if you are already there? - あなたがすでにそこにいるとしたら、誰になるか
当日は彼の登場とともに歓声があがり、オーディエンスの熱狂ぶりが見て取れました。
Tokenization and Fractional Ownership
こちらも目玉セッションの1つでしょう。どのように不動産の所有権を分割するのかについて、Security Token プラットフォームの Securitize CEO であるCarlos Domingo氏と、ブロックチェーンを利用したフラクショナルな不動産投資のためのプラットフォームである AKRU の Mohsin Masud氏、ブロックチェーン特化型の南フロリダにあるグローバルな不動産サービスであるHeightZero Real Estate & Consulting の Laura Pamatian 氏がお話ししました。
Securitize のCEO がこのイベントに登壇することは非常に意義があります。パブリックブロックチェーンの動きは Web3 と関わることが多く「既存産業へのアンチテーゼ」と捉えられがちですが、Securitize は既存の不動産産業や金融産業と最もうまく交流をしているブロックチェーン企業でもあります。今回のイベントはアメリカにおける不動産プレイヤーが多いなかで、Carlos Domingo氏のようなプレイヤーが出たことでイベントにまた一つのフレイバーが加わりました。
そのほかにもさまざまなセッションがありましたので一部を紹介します。
Transitioning Traditional Real Estate to the Metaverse
「従来の不動産をメタバースに移行する方法」について、アジア系アメリカ人コミュニティにおける持続可能な住宅所有の機会を促進しているアジア不動産アソシエーション (AREAA) の Jim Park 氏、市場をリードする不動産仲介会社ネットワークを築く HomeServices of America の Nina Fabbri 氏、ハイエンド市場の顧客に対する不動産仲介サービスを運営する Randy Char 氏、現実世界に地理的にマッピングされたARプラットフォームであるSuperWorld を運営するHrish Lotlikar氏がパネルトークを実施しました。
新進気鋭のメタバース空間の提供を試みるプレイヤーに対して伝統的な不動産仲介業者を対談させた形ですが、Propy としては既存の仲介業者をどんどん巻き込んでいくという姿勢が感じられます。
本セッションのラップアップはこちらにありますが、議論としては DAO や Metaverse そして不動産へのアクセスの容易性が増すというないようで今後につながっていくというところで閉められています。踏み込んだ内容というよりは、既存の枠組みの対比がなされる形で議論が進んでいったようです。
Building NFT portfolio and the power of NFT communities
「NFTポートフォリオの構築とNFTコミュニティの力」について、革新的な技術を開発するアーリーステージの企業に投資するベンチャーキャピタルのR7に所属する Kelly Dolyniuk氏、希少なNFTに投資する暗号通貨特化型の投資運用会社であるMeta4 Capitalに所属する Nabyl Charania氏、音楽などのエンターテイメントに特化した NFTマーケットプレイスを運用する OneOf の Erik Mendelson 氏のパネルトークでした。不動産イベントではありますが、どちらかというとジェネラルな NFT に特化した内容になっていたようです。不動産ブロックチェーンにおける NFT の活用はさまざまなところで議論されています。しかし無機質な不動産NFTに対して、現在アートの分野で特に盛り上がりを見せているNFTとでは性質が違うようにも思えます。どのように NFT が不動産で活用されていくのかは今後のテーマになることでしょう。
その他、「トークンまたはNFTコレクションを立ち上げる方法 (How to Launch a Token or an NFT Collection)」について、Equitycoin の Vernon J. 氏が話したほか、「NFTとメタバースの展開と動向(Developments and Trends in NFTs and the Metaverse) 」について、メタバース専門のマーケットプレイスを展開する WeMeta の Winston Robson 氏、メタバース専門の購入判断の支援サービス Witly.io を運営する Grant Wise 氏の掛け合いがありました。
上で取り上げなかった話題に関しては、不動産仲介業者や、ブロックチェーンファイナンスのプレイヤー、ベンチャーキャピタル、法律家などの立場から、以下のようなテーマがそれぞれ話し合われました。
まとめ
今回のイベントの参加者は400とのことだったので、比較的中規模のカンファレンスであったと言えますが、不動産ブロックチェーンにまつわる要人の多くが参加していました。一方で ”Crypto & Real Estate Summit” のように主語をとても大きくしているものの、こちらはあくまでも Propy のイベントであるため、競合の中でも比較的有力な RealT や Landshare をはじめとした他の企業は参加していませんでした。
Propy のように不動産ブロックチェーンにまつわる”教育”の分野に強く力を入れているプレイヤーはまだありません。過去の STO 事例が失敗した本当の理由が、十分なユーザー教育ができなかったことやそれに伴う市場の成熟度が足りなかったことである場合、Propy のアプローチは正しいと言えるでしょう。その意味で Crypto & Real Estate Summit は Propy にとって大きな意味を持つイベントであると言えます。
Propy は既存の業界や既存のエージェントを巻き込みながら不動産ブロックチェーンを推進していますが、今回のイベントでもそれが顕著に表れていました。あくまでも Web3 や Metaverse などの話題も出してキャッチーな内容にしつつも、伝統的な不動産業者もパネルトークに加えるなど、「不動産仲介者もヒーローにする」座組みをとっています。Propy は Propy の利鞘だけが厚くなるビジネスモデルを採用していないので健全に見えますが、今後どのように「Propy が持ち上げた既存の不動産屋さん」を儲けさせることができるのかが Propy のビジネスの成功にも繋がるはずです。
今後レポートや録画が一部出てくるとは思います。Propwave ではこのようなさまざまな動きをキャッチしてお伝えしますので、よろしくお願いいたします。