総資産 8 兆円の金融機関が発行するセキュリティトークン!ブラジルの不動産STOプロジェクト「reitbz」について解説!
reitbz は、ブラジルの不動産ブロックチェーンプロジェクトで、ブラジルの大手投資銀行である BTG Pactual が主体となってセキュリティトークンの発行を行なっています。このプロジェクトでは STO (STO=Security Token Offering についてはこちら) で調達した資金をもとにブラジルの不動産を取得し、その賃料収入や売却益がセキュリティトークン保有者に分配されます。BTG Pactual は、1983年に設立され、2020年度の総資産は約8兆円にも及ぶ大手金融機関です。今回は、この reitbz について詳しく解説していきます。
ブラジルの不動産市場について
ブラジルでは1950年代後半から1960年にかけて「50年の進歩を5年で」という政府のスローガンのもと、自動車産業の育成や新首都ブラジリアの建設をはじめ、国家主導の都市化が推し進められました。その結果、1950年から2010年にかけてブラジル人の都市部における人口は36%から84%に膨らみました。このような都市化による農村部から都市部への急激な人口移動は、深刻な住宅不足をもたらしました。ブラジルは南部、南東部、中西部、北部、北東部の5つの地域に分かれており、特にサンパウロとリオデジャネイロを擁する南東部はブラジルの人口の42%、GDPの55%を占めています。この地域はブラジルの住宅不足の大部分を占めており、サンパウロでは130万戸、リオデジャネイロでは50万戸の住宅が不足しています。
また、直近 10 年のブラジルの動きを見てみましょう。2015年と2016年は実質GDPがそれぞれ前年比3%減と2年連続でマイナス成長が続き市場の混乱が続いていました。しかし、2016年10月に Dilma 大統領が弾劾裁判により裏面されたことで転換点が訪れます。これにより約 13年続いた政権が終焉を迎え、2018年には労働改革や公共支出改革の結果が実り、GDP が堅調に回復しました。2019年にブラジル中銀の通貨政策委員会 (Copom) が政策金利を年利 6.5%から5.5%に引き下げ、その影響で各銀行が住宅ローンの金利を下げるなど不動産市場にとってポジティブな状況が続いています。
reitbzが投資対象とする不動産
上記に示した通り、ブラジルの不動産市場においては規制や監督が改善され、債権者がより効果的に差押えを回収できる仕組みが整備されつつあります。このことは売買においても有利に働き、以下のような不良不動産を市場価格よりも大幅に割り引いて取得する機会が増えてきています。これをディストレスト市場といいます。
reitbz ではサンパウロ州やリオデジャネイロ州の都市部でこれらに該当するものにフォーカスした投資を行なっています。こうすることによって公正な市場価格よりも30~60%割安な価格で不動産を取得することができ、キャピタルゲインを得ることができます。対象資産の取得から売却までの期間は18ヶ月を見込んでいます。
トークンとファンド運用の流れについて
reitbz で発行されるセキュリティトークン $RBZ は ERC-20規格で発行されます。多くのICOとは違い、STO で調達された資金は対象資産への投資のみに使用されます。
セキュリティトークンはケイマン諸島の財団会社法に基づいて設立された Reit BZ Limited (以下、発行体) が発行し、イーサリアムもしくはステーブルコインで購入できます。発行体は受け取った暗号通貨をブラジルレアルに換金し、ブラジルにある BTG Pactual の支店を経由して対象資産に投資をします。子会社の Enforce 社が対象資産を管理・運用し、発行体は該当不動産を売却することでキャピタルゲインを得ます。発行体は売却による収入を再投資するか、イーサリアムまたはステーブルコインに交換してトークン保有者に配分(エアドロップ)します。トークンを購入する際には、KYC/AML (本人確認)が必要になります。
Enforce社は、マネジメントサービスの対価として、以下の成功報酬を受け取ります。
対象資産への投資に関わる全ての経営判断は BTG Pactual と Enforce が行いますが、WEB上のダッシュボードにて、対象資産やトークンに関する最新の統計情報が見られるようになっています。そしてトークンの流動性を確保するため、WEBサイト上でトークンの定期的な買い戻しの募集や、世界中の主要な取引所にトークンを上場させることを目論見に入れています。
総論
今回はブラジルの不動産を裏付けとしたセキュリティトークンを発行する reitbz を紹介しました。単純にこれまでの不動産投資信託の証券をトークン化するだけでなく、ユーザーフレンドリーな WEB UI の提供、取引所への上場など、トークンならではの利便性を意識したサービス設計を試みていることが分かります。
BTG Pactual は大手投資銀行であるにも関わらず、Gemini と提携をしたり、暗号通貨取引事業「Mynt」を立ち上げるなど、暗号資産市場に積極的に投資をしています。暗号資産は国境を越えたグローバルな戦いになるので、今後トークンによる不動産証券化のデファクトスタンダードがどう生まれてくるのか、各社の動きに注目したいところです。