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ステーブルコイン入門【仕組みの分類と用途】

ステーブルコイン入門【仕組みの分類と用途】

Fumiya
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Entry - 初級2022年5月9日 00時00分

web3の世界に触れていると、しばしば「ステーブルコイン」という言葉を耳にするのではないでしょうか。ビットコインをはじめとする仮想通貨は、現状では価格変動が激しく、通貨として使うには実用性に欠ける面があります。そこで、「1 USDC = $1」のように、法定通貨建てで安定した価格になるように設計された「ステーブルコイン」が広く使われるようになりました。どのようなものなのかは何となく知ってはいるものの、「安定した価格」になるためにどのような仕組みが用いられているのかはご存知でしょうか?様々なステーブルコインが存在しますが、今回はそれぞれの仕組みによる分類と用途について解説をしていきます。

ステーブルコインの分類

ステーブルコインとは、ブロックチェーン上で発行されるトークンで、米ドルなど特定の法定通貨との為替レートを一定に保つように設計されたものをいいます。例えば、1 USDC は、常に $1 の価値を持つようになっています。このように、ドルに価格を連動させることを「ドルにペグする(Dollar-Peg)」と言います。ステーブルコインがそれぞれの法定通貨(ほとんどの場合はドル)にペグするために採用している仕組みによって、大きく以下の3つに分類することができます。

Fiat-Collateralized (法定通貨担保型)

法定通貨担保型のステーブルコインは、その名の通り法定通貨を裏付けとして発行されるコインです。USDC は Circle 社、USDT は Tether 社といった発行企業が存在し、1ドル分のステーブルコインを発行するために、担保として1ドル分の現金を準備します。分散化等意識されておらず、既存の金融に近い仕組みであると言えるでしょう。

  • メリット

    担保がある分、現金化しやすい。

  • デメリット

    担保を発行主体が用意する必要があり、需要量が大幅に増加した際に、それに応えきれない可能性がある。実際に、USDT の発行元である Tether 社が、発行枚数と同量の米ドルを保有していないのではないかという疑惑が浮上し問題になりました。

  • 例: Tether ($USDT)、USD Coin ($USDC)、Binance USD($BUSD)、TrueUSD ($TUSD)、Paxos Standard ($PAX)、Gemini Dollar ($GUSD)、JPYCoin($JPYC)

    Crypto-Collateralized (暗号資産担保型)

    暗号資産担保型のステーブルコインは、他の暗号資産を担保に DeFi プロトコル上で発行されるコインで、誰でも自由に発行することができます。例えば、DAI を発行できるスマートコントラクトである Maker プロトコルでは、ETH を預けることによって、預けたETH の価値分のDAIを発行することができます。ただし、暗号資産は価格に変動があるため、$100分の ETH を預けても $100 の DAI を発行できるわけではありません。担保にできる暗号資産にはいくつか種類がありますが、例えば ETH では、最低 1.45倍の額を担保として預ける必要があります。すなわち、$290 分のETHを預け入れると、$200 分まで DAI を発行できます。この比率のことを「Liquidation Ratio」と呼びます。

    ETH の価値が下がり、この Liquidation Ratio を下回ると、担保になっている ETH は強制的に精算されてしまいます。担保の ETH がオークションで市場価格よりも割り引かれた価格で売却され、損失の解消に使用されます。そのため、実際にはLiquidation Ratio より余裕を持って担保を預け入れる必要があります。

  • メリット

    誰でも簡単に発行ができる。

  • デメリット

    現金化しづらい。担保が精算されるリスクがあるため、過剰な担保が必要となる。また、常に担保となっている暗号資産の価格変動に注意をする必要がある。

  • 例: Maker DAI($DAI)、Liquity($LUSD)、Abracatabra ($MIM)、Synthetix ($sUSD)、Reserve tokens ($RSV)、USN($USN)、Alchemix USD ($ALUSD)

    Non-Collateralized (無担保型)

    発行に担保を必要とせず、2つのトークンでバランスを取ることで価値を安定させています。Algorithmic Stablecoin とも呼ばれます。例えば、UST の場合、UST と LUNA というトークンでバランスを取っており、USTが1ドル以上になると、1ドル分のLUNAで 1 UST が発行できるので、その差額で利益を得ることができます。逆に、UST が 1ドル以下となると、UST を使って 1ドル分の LUNAを得ることができるので、その差額を得るために UST が買われます。このように、アービトラージを得ようとする市場の参加者によって、1 UST = $1 が保たれるという仕組みとなっています。

  • メリット

    担保が不要であるため、需要に応じて際限なく発行ができる。

  • デメリット

    マーケットの購買力に依存するため、トークンのペア(UST と LUNAなど)に需要がないと価格を維持することができない。

  • 例: UST、TRON、Frax

    ステーブルコインの使い道

    支払い

    例えば、2010年にラズロ・ハニエツ(Laszlo Hanyecz)氏が 1万 BTC でピザ2枚を買ったことが有名ですが、2021年11月の BTC の価格のピーク時には、およそ6億8800万ドルの価値となっています。現状では価格変動が激しく、支払い手段としては不便な面もありますが、ステーブルコインを使うことによってこのようなデメリットを解消した上で、グローバルに素早く安価に送金をすることができます。

    仮想通貨取引の準備金

    円やドルといった法定通貨で仮想通貨を買うには、CEX (中央集権型取引所)を通じて交換する必要があり、直接様々な仮想通貨に交換することはできません。ステーブルコインで資産を持っておくことによって、安定した価値を保ちつつ、すぐに他の仮想通貨に交換することができます。また、既に持っている仮想通貨を利確したい時、一旦ステーブルコインに交換しておくといった使い方もされます。

    DeFi での運用

    暗号資産担保型を使うと、持っている暗号資産を売却せずに担保に預けることでステーブルコインを発行し、そのステーブルコインで別の仮想通貨を購入したり、運用することができます。自分の資産にレバレッジをかけて DeFi で運用したい時に使われます。

    レンディング

    ステーブルコインを貸し出すことで金利を得ることができます。安定した価値であるため、価格変動リスクを負わずにリターンを得ることができるのがメリットです。例えば、Anchor Protocol で UST を預けると、年利18.18%(2022年5月8日現在)を得ることができます。

    ステーブルコインの入手方法

  • CEX (中央集権型取引所)

    暗号資産取引ではステーブルコインの需要が高く、Binance や Bybit のような取引所でもメジャーなステーブルコインは取り扱っています。

  • DEX (分散型取引所)

    DEXでもステーブルコインを取り扱っています。ただし、ステーブルコインから別のステーブルコイン(USDTからUSDCなど)に交換する時、Uniswap などの一般的なDEXではなく、CurvePlatypus といったステーブルコイン専用の DEX を使うようにしましょう。手数料を安く済ませることができます。

  • アプリケーションで直接発行

    暗号資産担保型や無担保型は上記で説明したようにアプリケーションで発行することができます。CEX/DEXで入手するよりもこちらの方が得な場合があるので、こちらもチェックするようにしましょう。

  • 総論

    ステーブルコインは日常的な取引に限らず様々な使い道があり、その使い勝手の良さは DeFi プロジェクトのTVL増加に大きく寄与しました。現状最も多く使われているのは法定通貨担保型のステーブルコインですが、USTやDAIをはじめとした発行母体が不要な仕組みも発展してきています。WEB3サービスにおいてもはや必要不可欠となっており、今後価値担保の仕組みがどのように発展していくのか、どのような用途が生まれてくるのかぜひご自身でも使ってみながら理解を深めて頂ければと思います。

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