イスラエル発の不動産STOプラットフォーム「SolidBlock」とは
SolidBlock はイスラエルで2018年に創業した不動産向けのセキュリティトークン発行プラットフォームです。不動産をトークン化することで取引の透明性と流動性を向上させることを目的とし、これまであまり証券化されてこなかったアセットのセキュリティトークン化やグローバルな投資家層の獲得に向けた取り組みを進めています。比較的早い時期から不動産を主軸としたセキュリティトークンの普及に取り組んでいるSolidBlockですが、具体的にどのようなサービスを提供しているのか、どのような不動産をトークン化しているのかについてみていきましょう。
サービス概要
SolidBlock は自らのサービスを Tokenization as a Service (TaaS) と呼んでおり、不動産デベロッパーやファンドマネージャー向けに不動産をブロックチェーン上のトークンとして売り出すためのワンストップサービスを提供しています。不動産をトークン化するにあたって証券化に関する法規制やコンプライアンスに則った形で発行の手続きや運用を行う必要があります。そういった各種手続きのサポートや、トークンの販売や管理ができるWEB上のプラットフォームを運営しています。トークン化することで、従来の銀行や証券取引所を介することな個人間で直接取引できるようになり、安全、迅速、ペーパーレスで利便性が高い取引ができるようになるとしています。
投資家としてのメリットは、証券法の規制に則ったセキュリティトークンとして発行しているため、資産裏付けのない暗号資産よりも安全で安定した価格を維持できること、既存の不動産証券よりも少額から投資でき、好きなタイミングで取引を行えることが挙げられています。
発行された不動産トークンはどこで取引ができる?
不動産トークンが作成され、投資家に販売されたら、投資家がトークンを取引できるように取引所に上場させる必要があります。主要な暗号資産取引所では、まだ規制当局の承認を得ている最中でセキュリティトークンを取り扱えるところはごくわずかです。現在はセキュリティトークンの多くは ATS (代替取引システム)と呼ばれる私設取引プラットフォームで売買されています。SolidBlock の場合は、Templum Markets という ATS と提携し、トークンを上場しています。なお、日本のSTOの多くがプライベートチェーンと呼ばれる特定の事業者のみで運営されるチェーンが用いられていますが、 SolidBlock では、誰もが参加できるパブリックチェーンであるイーサリアムが用いられており、ERC-20 という標準規格でトークンが発行されています。そのため、ERC-20 に対応した取引所であればどこでも取り扱うことでき、SolidBlock が提携した取引所以外でも複数の取引所に上場することが可能です。
どのような不動産をトークン化しているのか
卸売業者や輸入業者向けの物流センターの建設プロジェクトなどの商業用不動産や、リゾートホテル、割安な住宅用不動産を購入してバリューアップして短期で販売するファンド等の持分がトークンとして販売されています。IRRは7%〜18%と様々ですが、どれも比較的高い利回りのものが多いようです。1口$250からと少額からの投資が可能となっています。
有名な例としては、コロラド州ロッキー山脈に位置する高級ホテル「St. Regis Aspen」をSTOで1,800万ドルを調達しました。売り出しはクラウドファンディングプラットフォームである Indiegogo で行われ、Aspen Coin という名前のトークンを 1トークン1ドルで 1,800万トークンを発行しました。今回販売されたのは、St. Regis Aspenの価値全体の18.9%であり、残りの81.9%は販売母体のElevated Returnsが保有しています。このように、不動産全てではなく、一部分のみ売りに出すこともできます。なお、この STO では、アメリカの証券取引委員会の登録義務の免除規定で最もよく使用される Reg D の Rule 506(c) で実施されており、適格投資家向けの販売となっています。
創業者はどんな人?
SolidBlock の CEO 兼 Co-Founder である Yael Tamar 氏は、SolidBlock の創業以前は20年近く金融市業界にいました。ウォール街のブローカーディーラーでアナリストとしてスタートし、M&Aやプライベートエクイティ、金融工学、年金基金やファミリーオフィス向けの商品やインデックスの組成に携わりました。また、イスラエルの不動産会社のIPOに携わった経験や、不動産業界間の知識交換のための主要な国際ネットワークであるFIBREE(Foundation for International Blockchain and Real Estate Expertise)の地域共同委員長も務めています。インフルエンサーとしての活動も精力的で、50以上のカンファレンスやイベントにゲストスピーカーとして出演したり、ポッドキャスト(Appleポッドキャスト、Spotify:BlockSolid)の配信を行うなどしており、Top 25 Blockchain and Cryptocurrency Speakers と 100 Most Inspirational Women In Blockchain に選ばれています。
新たな取り組み「NFTstays」
2022年5月25日、SolidBlockは、ホテルやリゾート向けに宿泊券付きのNFTを発行して販売することができる「NFTstays」をローンチしました。NFTはホテルの既存の予約システムと接続することができ、NFTを使って予約ができるようになります。最初にNFTが発行されるホテルは NoMo Soho というマンハッタンにあるホテルで、平日限定で3泊、全日3泊、全日6泊の3種類のNFTが Opensea で販売されています。宿泊は購入してから12ヶ月間のみ有効で、前払いチケットみたいなものですね。まだ実験的な取り組みのように見受けられますが、NFTを利用した予約のメリットとして、前払いによる稼働率の向上、宿泊特典によるロイヤリティとブランドの認知度の向上、NFTという未開拓の収入源による宣伝効果の拡大を挙げており、今後も販売対象のホテルを増やしていく予定のようです。
総論
今回はSTOプラットフォームのSolidBlockについてご紹介しました。まだ具体的な案件は発表されていませんが、日本の会社ともパートナーシップ契約を結んでいます。他にも株式会社LIFULLが Securitizeの日本法人と業務提携をし、不特法事業者向けにSTOスキームの提供をしており、日本の会社と海外のSTOプラットフォームとの提携が見受けられるようになってきています。日本の不動産を裏付けとしたセキュリティトークンがグローバルマーケットで流通する事例も今後増えていきそうですね。