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ブロックチェーンのブリッジとは?仕組みと役割について解説!

ブロックチェーンのブリッジとは?仕組みと役割について解説!

Fumiya
Fumiya
Intermediate - 中級2022年4月4日 00時00分

ブロックチェーンブリッジとは、クロスチェーンブリッジとも呼ばれ、異なる2つ以上(ほとんどの場合2つ)のブロックチェーン間でトークンやスマートコントラクトの呼び出し(コントラクトコール)などの情報を転送できるようにするシステムのことです。

この数年で、Solana、Near などの独自ブロックチェーンや、Polygon、xDAI などのサイドチェーン、Optimism や Aurora といったレイヤー2など、様々なネットワークが誕生しました。それぞれのネットワークがセキュリティの高さ、トランザクションの速さやコストの低さ、開発者やユーザーのコミュニティなど独自の強みを持っているため、どれか1つのネットワークだけを使うということはなく、1ユーザーが複数のネットワークを使うことが一般的です。

ブロックチェーン上のデータは全ての人が閲覧できる一方で、共有されているデータの正確性を保証するコンセンサスを維持できるよう、ネットワークのルールに従うマイナーのみがトランザクションを検証し、ブロックチェーンに書き込めるようになっているという性質を持っています。そのため、それぞれのネットワークが閉じた仕組みになっています。

例えば、イーサリアムネットワーク上にある USDT を Solana 上のアプリケーションで使いたいとします。この場合、イーサリアムのトークン規格であるERC-20 から、Solana のトークン規格 SLP に変換する必要があります。ブリッジを使わない場合は、以下のような手順が必要になります。

  • イーサリアム上の USDT を、Binanceなどの取引所に送金する。
  • 取引所で USDT を SOL に変換する
  • SOL をウォレットに送金する
  • Solana ネットワーク上の DEX で SOL を USDT にスワップする
  • このように、手間や想定以上の手数料がかかってしまいます。インターネットが登場した当初は、国ごと、地域ごとに分断されており、それぞれが全く繋がっていなかったのと同じように、ブロックチェーンネットワークもお互いの規格が異なっており分断されています。ブリッジを使うことで、こういった課題を解決し、

  • あるブロックチェーン上にあるアセットを他のチェーン上のアプリケーションで使う
  • 複数のブロックチェーン上でアプリケーションを稼働させる
  • といったことができるようになります。

    ブロックチェーンブリッジの仕組み

    ブロックチェーンブリッジは具体的にどのような仕組みで上記のようなことを成し遂げているのでしょうか。様々な種類のブリッジが開発されていますが、まずは一般的な仕組みについて解説します。

    ビットコインをイーサリアム上のアプリケーションで使うことを考えてみましょう。ビットコインとイーサリアムはどちらもメジャーなブロックチェーンネットワークですが、ルールやプロトコルは大きく異なります。ビットコインネットワークからイーサリアムネットワークに BTC を移動させるとき、以下の手順が行われます。

  • まず BTC はブリッジのスマートコントラクトによってロックされる。
  • イーサリアム上にロックされた BTC と同量のトークンをイーサリアム上で新規発行する。
  • イーサリアムからビットコインに戻したい時は、発行したトークンをバーンし、コントラクトにロックされていた BTC を取り出す。
  • すなわち、ブリッジを利用してあるブロックチェーンから他のブロックチェーンへトークンを移動する場合、実際に「移動」しているわけではありません。このプロセスにより、ビットコインとイーサリアムの両方のネットワークで同時に BTC を利用することができなくなります。

    もう少し詳しくフローを見ていくと、ほとんどのブリッジには共通した以下の4つの機能があります。

  • 元チェーンの状態の監視

    元チェーンのトランザクションを監視する「オラクル」「バリデータ」「リレイヤー」のいずれかのアクターが存在します。

  • メッセージの受け渡し/中継

    アクターがイベントをピックアップした後、送信元のチェーンから送信先のチェーンに情報を送信します。

  • コンセンサス

    モデルによっては、元チェーンを監視しているアクターが宛先チェーンに情報を中継するために、アクター間の合意が必要となる場合があります。

  • 署名

    アクターは、送信先チェーンに送信された情報に、個別に、または閾値署名スキームの一部として、暗号署名を行う必要があります。

  • ブリッジの種類

    ブリッジには大きく分けて4つの種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

  • アセット特化型

    2つのチェーンの間でアセットを移動することを目的としたブリッジ。先ほどのBTCをイーサリアムに移動させたような例がこれにあたり、多くの場合、預託委任あるいは非預託委任方式のいずれかで、原資産によって完全に担保された「ラップド」資産です。BTC は、他のチェーンにブリッジされる最も一般的なアセットで、イーサリアムだけでも7種類のブリッジがあります。構造が簡単な反面、機能が限られています。

    例) wbtc, wrapped

  • チェーン特化型

    2つのブロックチェーン間のブリッジで、通常は元チェーンでのトークンのロックやアンロック、宛先チェーンでのラップアセットのミントといった単純な操作をサポートします。こちらも比較的簡単に実装することができますが、拡張性は高くありません。例えば、Polygon の PoSブリッジは、ERCトークンや NFT を Polygon のサイドチェーンに移動することができますが、この2つのチェーン間に限定されます。

    例) Rainbow Bridge, Horizon Bridge, Polygon Bridge, Wormhole, Avalanche Bridge

  • アプリケーション特化型

    限定されたアプリケーション内での使用のみを目的としたブリッジです。アプリに特化していることからコードの記述が少なくて済むという利点があります。各ブロックチェーン上にアプリ全体のインスタンスを個別に持つのではなく、通常はより軽量でモジュール形式の「アダプター」を各ブロックチェーン上に配置します。アダプターを実装したブロックチェーンは、接続されている他のすべてのブロックチェーンにアクセスできるため、より高いネットワーク効果が期待されます。欠点は、その機能を他のアプリに拡張することが難しいことです。例えば、Compound Chain や Thorchain は、それぞれクロスチェーンでの貸し借りや交換に特化した別のブロックチェーンを構築しています。

    例) celer network, Ren, Anyswap, liquality

  • 汎用型

    複数のブロックチェーン間で情報を転送するために特別に設計されたプロトコルで、強力なネットワーク効果を持ちます。欠点は、このスケーリング効果を得るために、セキュリティ強度と分散性をトレードオフする設計にならざるを得ず、それが脆弱性を生む原因となってしまう可能性があることです。例えば、2021年8月に Poly Network がハッキングされ、6億1,000万ドル(約670億円)が奪われました。ちなみに、この犯人はネットワークのバグを内部の人間が隠したり悪用したりする前に、その脆弱性を世間に公開したかったとして、犯行後ほぼ全額を返還しています。

    例) Chainlink, optics, Poly Network, connext

  • 総論

    今回は、ブロックチェーンブリッジの仕組みの概要と種類について解説しました。現時点では、完璧なブリッジの仕組みは存在しておらず、どのブリッジもメリットとデメリットのトレードオフのなかで実装を進めています。チェーンが状態をロールバックした場合どうなるか、複数のチェーン間に渡ってNFTの取引があった場合、その所有権をどう証明するか、ネットワークレベルの攻撃にどのくらい耐えられるのかなど共通した課題も残されています。ブリッジはブロックチェーンの発展に重要な役割を持つ一方で、Poly Network のハッキング被害のように、脆弱性が経済的に大きな影響を与える可能性もあります。技術は日進月歩です。ユーザーが安心してプラットフォームを選ぶことなく、さまざまなブロックチェーン技術の恩恵を受けることができるようになる日が来るまで、今後のブリッジの動向が楽しみです。

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