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【図解】技術的知識がなくてもわかる 不動産ブロックチェーンの取引!

【図解】技術的知識がなくてもわかる 不動産ブロックチェーンの取引!

yuhattor
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Entry - 初級2022年1月4日 00時00分

これまでの投稿では、不動産ブロックチェーンのプロジェクトを多く扱ってきました。一部の読者の方は「不動産取引をブロックチェーン上で実装したい」と思われているかもしれません。この記事はそんなプロフェッショナルの皆様のための記事です。2回に分けて「不動産取引をスマートコントラクトで実装するとは如何いうことか」について取り扱っていきます。

第1回目は何の取引が実装されるのか、全体の流れについて扱っていきます。

ブロックチェーンの処理

この記事では、簡素化した不動産の取引と利益の発生プロセスについて深掘りしていきます。また、それに伴うコントラクトの実装としてどのようなものが必要なのかもみていきます。

1. おうちA の Mint

一番簡単なパターンを見てみましょう。ここではお家を表す価値として BUKKEN トークンというものを使います。① このケースではまずおうちA をトークンとして払い出します。おうちA は 100 BUKKEN トークンに分割されました。② そして、その分割した 100 トークンがオーナーX の所有としてスマートコントラクトで登録されました。これでオーナーX はおうちA を所有しているということがわかります。③ 最後に(もしくは最初に)、法的な登記をします。スマートコントラクトだけではブロックチェーン上の所有は証明できても法的な拘束力はなく、裁判で所有を主張することは難しいでしょう。この場合は特別目的会社 (SPC)をたて、不動産の所有を抽象化することとします。そうすることで、本来は所有者が変わるたびに必要だった複雑な登記手続きを省くことができ、司法書士事務所に払う手数料などもカットできます。

ここで重要な点が 2つあります。

まず 1点目が Mint の方法はこの限りではないことです。これはあくまでもスマートコントラクトの一例であり、米RealT のスタイルを模しています。彼らは ERC-721 のトークンとして家を Mint し、その後に F-NFT として複数の ERC-20 のトークンに分割することをしておらず、そのまま物件ごと ERC-20 のトークンを作って流通させています。このことによる流動性の低下など弊害はありますが、今回は取り上げるサンプルとして単純であることや、不動産取引のブロックチェーンにおける初期のアイコニックな事例ですので、この形で説明しています。他の例は、トークンエコシステムのための ERC-20 トークンA を発行し、物件トークンである ERC-721トークンB と、その F-NFTトークンであり、トークンAと連動する ERC-20 のペアトークンC を発行する。というものがあります。

そして 2点目が、SPCで物件所有を抽象化することは万能ではないことや、そもそも SPC を初期に作る際の手数料がかかること、またオーナーX の持分は流動するため、物件管理の主体が別に存在する可能性が高いことが挙げられます。

仮に上図が RealT を表すとしたら、国とスマートコントラクトの間に RealT という文字が入り、運営手数料や登記費用などを徴収することになります。

2. おうちA の販売

続いてオーナーX が物件を一部もしくは全部売りに出す時を考えてみます。この処理は本来、オーナーX が委託した企業 (RealT など) が代替することになりますが、今回は単純化します。

まず、① オーナーX が 50 BUKKEN トークンを売りに出します。② スマートコントラクトで新オーナーがそれぞれの物件をお金を払って所有します。今回の場合それぞれの BUKKEN トークンに対応する ETH を払って各持分の BUKKEN トークンを手に入れました。

最初のプロセスで物件の所有者はSPCとなっているため、その中の事実上の所有者が変わったとしても国に対して所有移転の登記をする必要はありません。

ここでもポイントが 2 点あります。

まず 1点目がインタフェースの必要性です。この例では取引インタフェースに関する図が省かれています。スマートコントラクトはオープンに公開されていて誰もが使えるようになっている一方で、そのままだと一般的に使いやすいとは言えないので、取引をするための使いやすいインタフェースが必要になります。多くの企業は取引のためのマーケットプレイスの用意をホワイトペーパーに盛り込んでおり、どこでも取引できるように ERC-20 や ERC-721 のような規格でトークンを作ることを明記しています。今回のケースでは、パブリックチェーン上の Ethereum でしたが、例えば日本ではプライベートチェーンの Corda で実現されている Progmat というプラットフォームがあります。ブロックチェーンにおける不動産流通もこれらのコンソーシアムにのってくる他、デジタル証券の取引所として大阪デジタル取引所が 2022 年に作られるなど、これらの動きは活発化しています。

これらの取引プロセス・コントラクトおよびインタフェースを作る企業がどのように手数料設計をしてくるのか、それがパブリックチェーンでの新興企業による不動産流通のケースと比べたときにどのくらい価格の差があるのか、またリスクが低いのかなどが焦点になってくるでしょう。

2点目がオーナーの信頼性です。不動産ブロックチェーンにおける海外事例でも不動産トークン所有は誰でもできるわけではないことになっています。ほとんどのケースで身分証明が必要で、また取引できる国民も決まっています。そのため、スマートコントラクトはパブリックに公開されていたとしても、アドレスのホワイトリストを作り特定の認可されたアドレスしか取引ができなくなっています。パブリックチェーンの場合はスマートコントラクトおよびオフチェーンの情報の組み合わせでその構成を作り上げますが、プライベートチェーンでは前段で弾くことができるので、ホワイトリストの実装はスマートコントラクト上でする必要がありません。

3. 賃料発生と受益権

最後のステップでは賃借人が現れます。この不動産に住む人が家賃を持分所有者に払うケースです。① まず賃借人Y が月の使用量を Ethereum で払います。② スマートコントラクトは国に対する税金や、管理業者への手数料を差し引きます。③ スマートコントラクトが現在の所有者に対して残りの Ethereum を、BUKKEN トークンの所有割合をもとに分割して付与します。

②番では物件の管理会社やインタフェースの運営会社などへの費用が差し引かれます。またこの賃借人が個人用に居住用物件を借りた場合は基本的に非課税ですが、事業用の場合課税になりますので、その点も手数料が変わってくることも留意する必要があります。

終わりに

このようにして処理は実装できました。スマートコントラクトは何かと難しいように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、図示すると意外と単純に表記することができます。複雑になればなるほどセキュリティホールが増える可能性があり、なるべく処理は簡潔に実装することが求められます。

次の記事では、エキスパートの皆様向けに、もう少し詳細な Solidity のコードレベルの内容を見ていこうと思います。

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