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Security Token Standard について解説! Polymath が狙うトークン標準化

Security Token Standard について解説! Polymath が狙うトークン標準化

Fumiya
Fumiya
Entry - 初級2022年1月25日 00時00分

この記事ではセキュリティ・トークンとその標準である Security Token Standard について詳しくみていきます。

セキュリティ・トークンとは

そもそもセキュリティ・トークンとは何でしょうか。仮想通貨やブロックチェーンにはさまざまなトークンがあります。大別される種類として ERC-20 のような ファンジブルトークン (代替可能) と。ERC-721 のような ノンファンジブル・トークン (NFT, 代替不可能) があります。一方でセキュリティトークンはこの二つの性質を持ち、資産または事業体の完全または部分的な所有権を表すように設計されています。

いわゆるビットコインやイーサリアムのようなユーティリティトークンはトークンの送受信に制限がありませんが、セキュリティトークンには、アイデンティティ、管轄、資産カテゴリーに基づく多くの制限があります。

ユーティリティ・トークンとの違い

ユーティリティ・トークンはブロックチェーンネットワークへのアクセスを表し、そのトークンを使うことでネットワークから商品やサービスを購入することができます。

一方でセキュリティ・トークンは、株式、不動産資産、芸術作品などの資産の完全、もしくは部分的な所有権を表します。上述したような企業、不動産、知的財産への投資は、すべてセキュリティ・トークンで表現することができます。セキュリティトークンは、ブロックチェーンおよび分散台帳技術を使用することによって、従来の株式よりも大幅な透明性をもたらす利点があります。

この記事で紹介する標準におけるセキュリティ・トークンはパブリックチェーンのブロックチェーン技術を用いているため、構造、流通や仕様変更は公開され、すべての人がアクセスできるようになっています。セキュリティ・トークンとその所有権を表すデジタル化された資産は Finance 3.0 のベースとなり、今後さまざまなイノベーションが起こると目されています。

"標準" の必要性

上でセキュリティトークンについてお話ししてきました。

しかし、『NFT って部分所有できるの? F-NFT について不動産を例に解説』で F-NFT について解説したように、Token を分割したり部分所有する方法はさまざまです。

不動産ブロックチェーンの世界には Propy や RealT、Landshare など、さまざまなプレイヤーが異なる仕様・規約のプラットフォームおよびトークンを展開しています。現存する不動産ブロックチェーンのプロジェクトは、多くの場合 ERC-20 のトークンを採用しており技術的には容易に交換可能ですが、本人確認の必要性や国ごとの限定的な交換規約などがあり、クロスプラットフォームでの交換のハードルはまだ高いといえます。

今後のセキュリティ・トークン有効活用のためには、発行者、投資家、KYCプロバイダー、ウォレット、取引所、規制当局、開発者などが同じ枠組みの中で協力しながら標準を決めて、標準に沿った運用が必要になります。

Security Token Standard

Security Token Standard は ERC 1400: Security Token Standard に記載されている通りで、セキュリティトークンを操作し、すべての関係者が照会できる標準インターフェースを規定するためのものとしています。

これらのセキュリティトークンの標準には、文書管理、エラー信号、ゲートキーパー(オペレーター)アクセス制御、オフチェーンデータ注入、発行/償還セマンティクス、トークン保有者の残高の一部互換サブセットを公開する機能が定義されています。

具体的には以下が含まれます。(草案時)

  • ERC 1410: Partially Fungible Token Standard所有者のトークンをパーティションにグループ化し、各パーティションを識別キーと残高で表現するためのインターフェイス
  • ERC 1594: Core Security Token Standard送金・発行・償還の際にオフチェーンでデータを注入し、実行時とは異なる送金の有効性をチェックする機能をサポートする規格の提供
  • ERC-1643: Document Management Standardスマートコントラクト、特にERC-1400 におけるセキュリティトークンコントラクトへのドキュメント添付をサポートするための規格の提供
  • ERC-1644: Controller Token Operation Standardトークンのコントローラ操作(強制転送)をサポートするための規格の提供
  • セキュリティー・トークン・ラウンドテーブル

    トークン標準に関する話し合いは活発に進んでいます。証券の発行、ライフサイクル・イベント、取引に関連する技術的、法的、規制上の機会や課題など、話し合うべきことはたくさんあり、今後も深めていく必要があります。会議が開かれた際の情報は以下にありますので、是非ご参照ください。

    動画は thesecuritytokenstandard.org より更なる情報は こちら

    今後の課題と展望

    今まで、さまざまな組織が Security Token Standard に貢献してきました。thesecuritytokenstandard.org では下記のようなサポーターが名を連ねています。

    しかしこの標準はまだデファクトスタンダードにはなっておらず、発展途上であることには留意すべきです。他にも TokenSoft が発表した ERC 1404 の Simple Restricted Token Standard などがありますし、今後もさまざまなものが出てくるでしょう。

    日本における STO では Securitize 社が大きなインパクトを出しています。Securitize Japan が LIFULL と連携した事例の『不特法事業者向けSTOプラットフォームで国内初の一般個人投資家向け不動産STOが実施』や、SBI証券でも皆さんが買うことのできる STO案件である神戸六甲アイランドDCなどが挙げられます。Propwave でも『【STO 事例】不動産のデジタル証券・神戸六甲アイランドDCについて解説』の記事で具体的な STO 事例に関しては取り扱っておりますので、是非ご覧ください。

    Securitize の特徴はブロックチェーン上に作られた仕組みだけではなく、STOを取り巻くさまざまな機能を、外部のサービスと連携して提供できる点にもあります。例えば、KYCを行った際の、ブロックチェーン外のデーベースにある個人のデータとの連携をはじめとして、実際の取引に必要な機能を多く提供しています。

    一方で、STO の盛り上がりも一辺倒ではありません。今回のケースでは主にパブリックチェーンのイーサリアム上でのトークンスタンダードを扱いましたが、ブロックチェーンはもちろんイーサリアムだけでないですし、パブリックチェーンではなくプライベートチェーンが求められるケースもあります。特に日本では不動産ブロックチェーンですとプライベートチェーンのほうが進みが早いと言えるでしょう。そういったケースでは、この記事で紹介された標準とはまた違った世界が広がることになります。今後はこれらの世界の覇権争いや、協議が進むことになるでしょう。

    例えば神戸六甲アイランドDC の STO 案件では、基盤のブロックチェーン技術として Corda が採用されています。 技術的な観点では、Corda のスマートコントラクトの実態はJVM のバイトコードであり、Java や Kotlin などのプログラミング言語を用いて書かれることになりますが、今回の記事で紹介した標準で採用されているイーサリアムの場合は Solidity 言語を用います。そのため thesecuritytokenstandard.org には、Securitize がサポーターとして名を連ねていますが、これらの Token Standard が案件で実際に広く実装されているかというと、そうではないことも留意すべきでしょう。

    今後は、パブリックチェーンの中で一定のプライバシーを守りつつも、オープンなトークン交換を実現したいプロジェクトと、プライベートの中になるべく収めて既存のビジネスの延長線上でブロックチェーン技術を使いたいプロジェクトがどのような動きをするのか、注目が集まります。

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