不動産ブロックチェーンの情報ハブ
【STO 事例】不動産のデジタル証券・神戸六甲アイランドDCについて解説

【STO 事例】不動産のデジタル証券・神戸六甲アイランドDCについて解説

George
George
Entry - 初級2022年1月16日 00時00分

日本でも初期の STO 事例

STO とは、Security Token Offering の略で、デジタル証券を活用して資金調達をする手段のことを指します。今回は不動産 STO の初期の事例として、神戸六甲アイランドDC についてみていきます。

もし SBI 証券を使って株式のトレードを実施している方は、取引の項目の一部に "ST" という項目が最近できていることに気づかれた方がいらっしゃるかもしれません。最近このような事例が少しずつではじめており、本件の神戸六甲アイランドDCケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南に続き2件目になります。

不動産 STO と今回の事例の位置付けについて

以前「プライベートチェーン vs パブリックチェーン 不動産に適しているのはどっち?! STO について考える」の記事で STO での資金調達と、海外に多いパブリックチェーンの比較をしました。新興企業が参画する傾向があるパブリックチェーンによる資金調達に対し、今回のように STO ですと、三菱UFJ信託銀行株式会社や、三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社、SBI証券株式会社をはじめとしたさまざまな大手金融機関、投資法人のがからんで STO が実現されています。

この STO においてトークンは、委託者・受託者・受益者代理人間の不動産管理処分信託受益権信託契約をもととして設定される信託受益権のことを表しています。もう少し平易な表現をすると、今回 STO を発行した金融機関をはじめとするステークホルダー間で結ばれる不動産投資・管理などの契約があり、その取り決めのひとつである "利益分配を得る権利" (=信託受益権) がトークンとして表現されています。

ここでのポイントは信託受益権がピュアに取り出されてトークン化されているところです。パブリックチェーンにおいても不動産のトークン化の動きがありますが、彼らのアプローチはあくまでも SPV (Special Purpose Vehicle = 特別目的投資ビークル) を介して不動産所有媒体のメンバーシップを販売・交換するものでした。このケースでは全トークンを買い占めれば、自分がその物件の 100% オーナーシップを主張することができ、その物件の完全所有が認められます。それに対して今回のSTO事例におけるトークンは真の所有権を表すものではありません。この STO に際しては 1572口のトークンが売り出されましたが、それらの 1572口を一人が買い占めたとしても六甲DCの所有権を要求することはできません。一方で、経済的には投資対象不動産を直接所有している場合とほぼ同様の利益状況に置かれます。

信頼性を保証する技術

神戸六甲アイランドDC の目論見書ですが、非常に面白い内容になっています。他の目論見書に比べ、技術に関するテーマの話が多くなっています。

本投稿では要点をピックアップして解説したいと思います。今回の STO では Progmat というシステムがブロックチェーンのサービスとして採用されています。これは三菱UFJ信託銀行株式会社が開発する分散型台帳システムであり、プライベート/コンソーシアム型のブロックチェーンである Corda を基幹としています。この仕組みで本受益権に関する記録や移転が実施されます。プライベート/コンソーシアム型チェーン採用の背景は、顧客資産の流出を未然に防止し、セキュリティ確保の必要性があります。下記に要点をまとめました。

プライベート/コンソーシアム型のメリット

  • アクセス範囲の限定が可能
  • トランザクションを作成しうるノードの限定・選択が可能ブロックチェ ーンに取り込まれるデータを作成することができるノードとして参加するためにはネットワーク運営者の許可が必要
  • トランザクション作成者の特定が可能ブロックチェーンに取り込まれるデータを作成できるノードの保有者は特定されているため、誰がいつ書き込んだかを全て追跡することが可能
  • Corda のメリット

  • 取引情報のプライバシー確保が容易

    各ノード自身のバランス情報を共有する必要がなく、取引データごとに「知る必要がある」場合にのみ共有するデータ構造となっているため、プライバシーを容易に確保することができます。

  • スケーラビリティの容易性

    Corda は、ある時点の全ノードの複数のトランザクションを1ブロックに集約するブロックチェーンとは異なり、個々のトランザクション単位で構成されているため、複数のトランザクションを並列処理することでトランザクション処理速度の向上・高速化を容易に実現します。また、ノードを順次追加していくことが容易であるため、トランザクション数、ノード数ともに容易に増やすことができ、スケーラビリティを確保することができます。

  • スマートコントラクトの柔軟な実装

    Cordaは各ノードが独自の動作を定義できるため、各ノード独自の検証や各ノード独自のシステムとの連携を柔軟に実装することが可能であり、スマートコントラクトを柔軟に実装することが可能です。

  • まとめ

    今回、STO の初期事例である神戸六甲アイランドDCについて扱いました。日本においてもこのようなデジタル証券が今後活性化すると考えられ、それらデジタル証券の取引所プラットフォームを提供する大阪デジタルエクスチェンジ株式会社にも注目が集まります。

    今回のセキュリティトークンは一口50万程度で買うことができます。米国などの新興企業の提供するパブリックチェーン上の不動産トークンは数千円から買えるものが多い一方で、本人確認などの必要性があり、日本人には手の届きにくいものになっています。そのため、日本で不動産トークンを買うのであれば、現状これらの Security Token 一択と言っても過言ではありません。ご興味ある方は是非目論見書を読んでみてください。

    Read Next