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既存の REIT はもう古い?ブロックチェーンで自律分散型 REIT を実現する D-ReiT の挑戦

既存の REIT はもう古い?ブロックチェーンで自律分散型 REIT を実現する D-ReiT の挑戦

Fumiya
Fumiya
Entry - 初級2021年12月31日 00時00分

D-ReiT とは、その名の通り分散型 (Decentralized) の REIT を実現するプロジェクトです。暗号通貨を用いて不動産を証券化するプロジェクトはいくつかありますが、D-ReiTはどのようなスキームで実現しようとしているのか紐解いていきましょう。

概要

D-ReiTは、ブロックチェーン技術を活用することで、不動産、企業の株式、再生可能エネルギープラントなどの有形資産に少額から投資することができるスペイン発のプラットフォームです。通常のREITと比べて下記のようなメリットがあります。

  • 投票制によるコンセンサス

    通常の REIT での不動産購入や運用に関する意思決定については、投資家は関与せず、管理者によって行われます。D-ReiT では、ブロックチェーン上の投票システムにより、トークンの保有者がどの物件を購入するかを多数決で決定します。

  • より小さい規模の商品を作れる

    REIT を設立するための最低資本金は、スペインでは500万ユーロ(約6.5億円)と高いです。D-ReiTではこれより小さいサイズでも商品化でき、より少額の投資家も参加できるようになります。

  • 中間業者の排除

    ブロックチェーンで各取引の情報を記録し、スマートコントラクトで取引を自動化することで中間業者を排除します。

  • トークンの仕組みと活用

    D-ReiT で発行されているトークンである DRT は、PancakeSwap での IFO (Initial Farm Offering) にて売り出されました。DRT は、プラットフォーム手数料などのオンチェーンの取引と、不動産売却時のキャピタルゲインや賃料収入などのオフチェーンの取引の両方の収益分配が保有割合に応じて実行されるセキュリティトークンです。スマートコントラクトの運用にはバイナンススマートチェーン(BSC) が用いられ、ERC-20規格で実装されています。

    まず、商品をプラットフォーム上で公開し、資金調達をしたい起業家や中小企業はリクエストを申請します。このリクエストは D-reiT で専門家による審査が行われた後、DRTトークン保有者の投票によって、プラットフォームにローンチされるかが決定されます。ローンチが決定されると、コントラクトによって配当付きの ERC20トークンが発行され、プラットフォーム上に売りに出されます。

    また、本人確認が必要なサービスにアクセスするには、本人確認の手続きをすると発行されるKYC トークンが必要になります。

    取得した不動産から得られる収益(賃料収入と売却益)の80%を BNB (Binance Coin)に変換したのち、スマートコントラクトを通じて DRT 保有者に定期的に分配します。最初は月次としていますが、この頻度についても DRT 保有者の投票によって変更できるようになる予定です。

    投資対象の不動産

    D-ReiT が投資対象とする不動産については、詳しくは言及されていませんが、不動産ポートフォリオを清算する必要のある銀行や競売で20-30%の割引価格で取得するとしています。物件を選定し、トークンホルダーによる投票で承認され取得した後は、Airbnbなどのプラットフォームで貸しに出し、収益を得ます。

    総論

    トークンを使って REIT を再定義するプロジェクトは、今回のスペインのD-reiTに限らず様々な国で試みられています。特に2021年は DeFi が流行った年でもあり、DeFi の概念と REIT は相性が良く、なおかつ不動産という裏付けがあることがトークンの価値を作る上で重要な要素となっています。セキュリティトークンは有価証券として扱われる国がほとんどで様々な規制の対象となりますが、不動産証券化の大きな潮流になることは間違いないので、今後の法改正の行方も含め引き続き注目したい分野です。

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